
飲食店の開業にあたって、「防火管理」は避けて通れない大切なポイントです。
火を扱う業種である飲食店は、テナント契約や内装工事の段階から消防法や建築基準法に基づいた対応が求められます。
本記事では、飲食店オーナーや開業予定者が押さえておくべき「防火管理」の基本知識と、実際のチェック項目を詳しく解説します。
🔹 1. 飲食店に求められる防火管理とは?
飲食店における防火管理とは、火災の発生を防ぎ、万が一の際に被害を最小限に抑えるための体制を整えることを指します。
消防法では、一定規模以上の建物や店舗に対し「防火管理者」の選任と「消防計画」の作成を義務づけています。
■ 防火管理者の選任が必要なケース
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収容人員30人以上の飲食店
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同一建物内の他店舗と合わせて30人を超える場合
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テナントビルや複合施設に入居している場合
※つまり、自店単体で小規模でも、ビル全体で基準を満たせば防火管理者を置く義務が発生します。
防火管理者は、消防署が実施する講習を受講することで資格を得られます。
有資格者が不在だと、消防検査で「改善命令」や「開業許可の保留」が出されることもあるため注意が必要です。
🔹 2. テナント契約時に確認すべき防火設備
テナントを借りる段階で、防火・避難設備が法令基準を満たしているかを必ず確認しましょう。
特に居抜き店舗の場合、前の業態によって設備が不足していることがあります。
チェックすべき主な項目
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自動火災報知設備(感知器・受信機など)が設置済みか
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スプリンクラー設備の有無
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誘導灯・非常灯の位置と作動確認
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消火器の設置数と有効期限
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非常口・避難経路の確保
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厨房ダクトの清掃状況・防火ダンパーの有無
消防署による「事前相談」制度を活用すれば、開業前にこれらのポイントを確認してもらうことができます。
🔹 3. 厨房設備と火災リスク対策
飲食店の火災原因の多くは「厨房」で発生します。
特にガスコンロ・グリラー・フライヤーなどを扱う店舗では、油汚れの蓄積や排気ダクト内のススが引火原因になるケースが多いです。
主な防火対策
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厨房フード・ダクトの定期清掃(最低でも半年に1回)
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自動消火装置の設置(高火力機器を使用する場合)
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ガス漏れ警報器・熱感知器の設置
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調理従業員への避難訓練の実施
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電気配線・コンセントの過負荷防止
特に焼肉店や中華料理店など高温・油煙が多い業態は、消防法上も火気使用設備の制限や追加設備が求められることがあります。
🔹 4. 防火管理計画と従業員教育
防火管理者を選任した後は、**「消防計画」**を作成し、従業員へ周知する義務があります。
消防計画に含める主な内容
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火災発生時の通報・避難誘導手順
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消火器の配置と使用方法
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従業員の役割分担(通報係・避難誘導係など)
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定期的な避難訓練の実施計画
この計画は、消防署へ提出・承認を受ける必要があります。
また、年1回以上の避難訓練の実施も義務化されています。
🔹 5. 防火管理違反のリスクと罰則
防火管理者を選任せず営業を行った場合や、消防設備の未設置・不備を放置した場合、消防法違反として以下の罰則が科せられる可能性があります。
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改善命令・使用停止命令
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罰金(最大50万円以下)
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最悪の場合、営業停止
特に近年では、テナントビル全体での防火体制の不備が原因で指導を受けるケースも増えています。
入居時に「ビル全体の防火管理体制」を確認しておくことも重要です。
🔹 6. まとめ:防火管理は“開業準備”の重要な一部
飲食店の開業準備と聞くと、物件探しや内装デザイン、メニュー開発を優先しがちですが、防火管理体制の構築は同じくらい重要です。
消防法に適合していなければ、いくら理想的な店舗でもオープンできません。
特にテナントビルや居抜き物件を借りる場合は、
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消防設備の状態
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防火管理者の有無
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消防署への届け出状況
を早い段階で確認し、法令遵守と安全性を両立した店舗運営を目指しましょう。
📌 ポイントまとめ
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30人以上収容の飲食店は防火管理者が必須
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居抜き店舗は消防設備の不足に注意
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消防計画と避難訓練は義務化
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違反すると営業停止や罰金の可能性あり